【誰でも簡単!】超便利!授業のねらいの設定に役立つ4つのツール
学校働き方改革アドバイザーの小太郎です。
今回は、「授業のねらい(目的)」とその設定方法を解説します。
「授業力アップ!読むだけでわかる授業の作り方 授業づくりの基本を4STEPで丁寧に解説」で、「授業のねらい」の大切さをお伝えしました。
しかし、若手の先生の中には、
「どうやって授業のねらいを設定したらいいか分からない」
「ちょっと面倒くさそうだから、また今度でいいか・・」
と思っている方もいるのではないでしょうか。
「授業のねらい」の設定は、授業を作る上でとても重要です。なぜなら、「授業のねらい」こそが「授業のゴール」であり、「目的地」だからです。
「授業のねらい」を設定せずに授業を行うことは、目的地も決めずに生徒を連れ回すことと同義なのです。それは、もはや拉致です。笑
そこで今回は、たった10分で「授業のねらい」が設定できる超便利な4つのツールを、教科推進委員の視点で解説したいと思います。
小太郎
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目次
「授業のねらい」の設定に役立つ4つのツール
「授業のねらい(=目的)」とは、授業で達成すべき目的地(ゴール地点)のことです。
自治体や校種によっては、
- 授業の目標や目的
- 生徒に身に付けさせたい力
- 今日のめあて
などと呼ばれています。
具体的には、
- ~のしくみを理解する
- 論理的に考える力を身に付ける
- 他者と協働しながら合意形成する力を育む
などが「授業のねらい」に当たります。
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では、どのようにして「授業のねらい」を設定すればよいのでしょうか。
結論から言えば、以下の4つのツールを参考に設定するのが最も簡単かつ効果的です。
- 学校目標
- 各教科の目標(学習指導要領)
- 生徒の課題
- 自分なりの思い・テーマ
以下、詳しく解説したいと思います。
ツール1:「学校目標」を活用する
学校目標とは、各学校が設定している、学校独自の教育目標です。
学校によって、
- 学校目標
- 目指す生徒像
- 教育目標
などと呼ばれています。
学校目標は、「建学の精神」などを目標とし、伝統的に守り続ける学校もあれば、毎年検討が加えられ、マイナーチェンジを繰り返している学校もあります。
例えば、
- 自ら学び、考える力を育てる
- 人間尊重の精神を培う
- 健康で心身ともにたくましい生徒を育てる
などが学校目標に当たります。
「知・徳・体」に言及しているものが多く、目標がやたらと長く覚えにくいのも特徴の一つです。
所属校の学校目標をすらすらと言える先生は稀だと思いますが、授業をつくる上では、学校目標を意識しておくことをオススメします。
なぜなら、学校目標には、必ず学習(知育)に関する目標が掲げられているので、そのキーワードを拾って授業をつくるだけで、
- 学校の目標
- 授業のねらい(=目的)
を整合させることができる便利なツールだからです。
例えば、新採用の先生が研究授業の振り返りで、「授業のねらい」の設定理由を聞かれたら、
「学校目標を意識して設定しました」と答えれば、管理職は感心することでしょう。
(ほう、新採用なのに、学校目標をキチンと咀嚼しておるとはなかなか・・)
と内心思っているはずです。
そこで、さらにこう続けてください。
「学校目標には〇〇」とあり、「授業の単元が××」でしたので、両者の親和性が高いと思い、「授業のねらい(目的)」に設定しました。
小太郎
これで効果は抜群です。
なにせ学校目標を知らない職員の方が多いのですから、学校目標を考えた管理職は喜びます。
とはいっても、ここで言っていることはごく単純で、
- 学校目標に〇〇と書いてありましたよ
- 今回の授業の単元は××でしたよ
- 1と2は重なる部分が大きいので〇〇を「授業のねらい」にしてみました
というだけの話です。
これだけで授業のねらいは明確になるわ、管理職は喜ぶわ、なので、学校目標を意識しておくのは、実はとても費用対効果(コストパフォーマンス)が高いのです。
さて、管理職を喜ばせる必要があるかどうかは別にしても、
「学校目標」と「授業のねらい」のベクトルが一致しているという視点は大事だと思います。
教員の中には、管理職からのトップダウンを嫌ったり、職員の自由な発想を重視するあまり、学校目標なんかどうでもいい、と言わんばかりの人もいます。
しかし本来、組織の方向性とそこで働く人間の目標を調和させるのは当然のことです。
そうでなければ、組織の目標など達成できるわけがありません。
ぜひ、組織の一員としての自覚を深めながら、授業力をアップさせるために、学校目標を意識した授業づくりをしてみてください。
ツール2:「各教科の目標(学習指導要領)」に準じる
ご存じの通り、学習指導要領は、国(文部科学省)が定める教育課程の基準です。
学習指導要領には、
- 各教科や科目の目標
- 内容
- 内容の取扱い
などが定められています。
前述の学校目標(学習目標の部分)も、これに則って策定されており、すべての学校の学習上のルールと言えます。
余談ですが、教科のスペシャリストである指導主事も、この指導要領に則って指導・助言をしています。いや、むしろ、「指導要領に書かれていることしか言えない」と言った方が正しいぐらいです。ですから、指導要領に準じた「授業のねらい」ならば、誰からも文句を言われることはありません。
小太郎
では、実際に「高等学校 政治・経済」の指導要領上の目標を見てみましょう。
第3 政治・経済
1 目 標
社会の在り方についての見方・考え方を働かせ,現代の諸課題を追究したり解決に向けて構想したりする活動を通して,広い視野に立ち,グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。出典:高等学校学習指導要領(平成30年告示)
ここまでは少し抽象的ですが、以下に具体的な目標が示されています。
長くて読みにくいので、「授業のねらい」として使えそうな箇所にマーカーを引いてみましょう。
(1)社会の在り方に関わる現実社会の諸課題の解決に向けて探究するための手掛かりとなる概念や理論などについて理解するとともに,諸資料から,社会の在り方に関わる情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。
(2)国家及び社会の形成者として必要な選択・判断の基準となる考え方や政治・経済に関する概念や理論などを活用して,現実社会に見られる複雑な課題を把握し,説明するとともに,身に付けた判断基準を根拠に構想する力や,構想したことの妥当性や効果,実現可能性などを指標にして議論し公正に判断して,合意形成や社会参画に向かう力を養う。
(3)よりよい社会の実現のために現実社会の諸課題を主体的に解決しようとする態度を養うとともに,多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される,国民主権を担う公民として,自国を愛し,その平和と繁栄を図ることや,我が国及び国際社会において国家及び社会の形成に,より積極的な役割を果たそうとする自覚などを深める。出典:高等学校学習指導要領(平成30年告示)
という具合です。
目標なのに、それを達成するための「手段」まで示されていたり、教育行政の文章は独特で本当に読みにくいのですが、端的には、
- 知識・技能
- 思考力・判断力・表現力
- 学びに向かう力
の3観点を柱として育成を目指す旨が書かれています。
(旧指導要領が4観点だったのに対し、新指導要領は3観点であることが大きな変更点です。指導要領改訂のポイントは他にもあるのですが、本論から外れるので、別の機会に解説したいと思います。)
学習指導要領は、おおよそ10年に一度改訂されます。
そしてその時々の社会情勢や課題が反映されます。平成30年告示の指導要領にも、
- グローバル化
- 少子高齢化
- AI・IoTなどの技術革新
- 持続可能性(SDGs)
など、まさにこれからの時代に取り組んでゆくべき課題が示されており、その解決に必要な資質・能力も示されているのです。
ですから、学習指導要領を参考に「授業のねらい」を設定すれば、文科省の課題意識に準じた授業を行うことができるということです。
ただ、難点はとにかく指導要領が読みにくいので、ポイントだけ絞って使えそうな目標を箇条書きにしておくのもいいと思います。
ツール3:「生徒の課題」から考える
普段から生徒と接していると、良きにつけ悪しきにつけ、生徒の特徴が見えてきます。
「授業のねらい」とは、「身に付けさせたい力」のことなので、生徒の課題を「授業のねらい」として活用する方法があります。
例えば、
生徒の課題 | 授業のねらい(身に付けさせたい力) |
知識が定着していない | 基礎的な知識を身に付ける |
自分の考えを表現することが苦手 | 言語能力の育成 |
意見の根拠が弱い | 資料を読み取り、活用する力を育む |
などが考えられます。
いずれも、生徒の課題を授業によって解決しようとする構図となっているので、「授業のねらい」の設定としてシンプルで分かりやすい方法だと思います。
生徒の課題は、そこで働く先生方の肌感覚があってこそ見えてくるものです。
生徒と接する中で感じた彼らの課題を解決・改善するために、生徒の課題から「授業のねらい」を設定してみてはいかがでしょうか。
ツール4:「自分なりの思い・テーマ」を取り入れる
教員をしていると、授業のあり方について、熱い思いが湧いてくることもあるのではないでしょうか。
- 分かりやすい授業をつくりたい
- 生徒と双方性の授業でコミュニケーションを取りたい
など、理想の授業はそれぞれだと思います。
あるいは、先生方には教育的な信条や価値観もあることでしょう。
- これからの時代は知識を活用する力が必要だ
- 指導要領も大事だけど、うちの生徒には、まずは生きていくための知恵が必要だ
など、教員としての価値観も様々だと思います。
こうした個人的な思いを「授業のねらい」に落とし込むのです。この方法で「授業のねらい」を設定するメリットは、何と言っても、自分に嘘を付かないことです。
学校目標にしても、指導要領にしても、大切な基準ではありますが、極論すれば、自分ではない他の誰かが作ったものです。
すると、そこに書いてあることは理解できたとしても、自分の優先すべき課題とはズレが生じることもあると思います。
小太郎
しかし、自分の思いを「ねらい」とすれば、自分の気持ちに正直に授業を構成することができます。
「授業のねらい」の設定理由を問われても、自信を持って答えることができるはずです。
いつも自分の信念だけで授業をつくっては、独りよがりなものになってしまいますが、
信念のない授業など何の面白味もありません。
ぜひ、学校目標、指導要領などとのバランスを見ながら、自分なりの熱い思いを「授業のねらい」に取り入れてみてください。
まとめ
今日は、授業づくりのコツとして、「授業のねらい」に役立つ4つのツールを解説しました。
時々、若手の先生から、「研究授業の指導案を書いているのですが、授業のねらいの設定に困っています・・」という相談を受けます。
その時にいつも紹介するのが、この方法です。
「授業のねらいの設定方法が分からない・・」
「授業のねらいを考える時間がない」
という先生は、ぜひこれらのツールを試してみてください。
時間をかけず、簡単に、効果的な「授業のねらい」が設定できると思います。
では、本日のおさらい。
授業のねらいを設定する際は、
- 学校目標を活用する
- 各教科の目標(指導要領)に準じる
- 生徒の課題から考える
- 自分なりの思い・テーマを取り入れる
という4つツールが超便利!
これで迷うことなく「授業のねらい」が設定でき、授業力アップも間違い無しです!
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