【授業のコツ】授業の「ねらい(=目的)」と「手段」の関係性

こんにちは、小太郎です。
前回、授業力アップのコツとして、
- 授業の「ねらい(=目的・目標)」を設定し、
- 「目的」を達成するために適切な「手段」を選ぶこと
をお話ししました。
この「目的」と「手段」の関係について、詳しく知りたいというご意見を頂きましたので、授業づくりの具体例を紹介しながら解説したいと思います。
小太郎
「目的」と「手段」の関係性

dictionary
まず、言葉の意味としては、
- 「目的」 : 成し遂げたい事柄 (端的に言えば、目指すべきゴール)
- 「手段」 : 目的を達成するための方法
となります。
具体例を挙げると、
目的 | 手段 |
学力を上げる | 予習・復習を行う |
健康を保つ | ジョギングをする |
お金を稼ぐ | バイトをする |
などが、「目的」と「手段」の関係です。
「手段」によって、「目的」が達成される構図になっています。
授業の「目的」と「手段」もこれと同じです。
例えば、
目的 | 手段 |
表現力を育む | 授業にプレゼンを取り入れる |
などが考えられます。
表現力を育むための方法論として、プレゼンを行うということです。
ここで注意すべきポイントは、
「目的」を達成するための「手段」は一つではない、ということです。
例えば、
「モテる男になる」という「目的」を達成するための「手段」は、
- コミュ力を上げる
- オシャレをする
- 経済力アップ
- 身だしなみに気を付ける
- 体を鍛える
- 優しくする
などなど、いくらでも挙げることができます。
【モテる男になるための手段のイメージ図】
やはり授業も同じで、
「目的」を達成するための「手段」は一つではありません。
先ほどの例では、
「プレゼンを取り入れる」ことによって、「表現力の育成」目指しましたが、
「表現力を育む」ための「手段」は、他にも、
- ポスターセッション
- 演劇の表現を学ぶ
- 文学作品を読む
なども考えられます。
要は、「手段」の中でどれが一番効果的かを考えることが、授業の質を高めることにつながるのです。
「目的」と「手段」を意識した授業づくりの例
では、実際の授業を例に「目的」と「手段」の関係を見てゆきましょう。
小太郎
- 単元名 : 世論形成と政治参加
- 生徒の課題
①意見を述べる際の根拠が乏しい
②他者の意見をなかなか受け入れられない - 授業のねらい(目的):多様な意見を踏まえて、論拠を持って主張する力を育む
- 手段 :「 模擬選挙」をテーマにしたグループワークを行い、自分の考えを発表する
具体的な授業の流れ
これは、僕が新聞から取材を受けた際に、実際に行った授業実践です。
授業づくりの順序としては、
(①意見を述べる際の根拠が乏しい、②他者の意見をなかなか受け入れられない)
(この単元で上記①②を改善させる方法はないかな・・?
(ねらいは「多様な意見を踏まえて、論拠を持って主張する力を育む」にしよう)
(模擬選挙とグループワークの組み合わせれば、ねらいが達成できるかも・・)
(①根拠が乏しい→論拠を明示させる、②他者の意見を受け入れない→グループワーク)
という流れです。
ここでは、「授業のねらい(=目的)」を
と設定していますが、
「ねらい(=目的)」が変われば「手段」も変わりますし、
たとえ「ねらい(=目的)」が同じであっても、「手段」は一つではありません。
もっと良い方法がきっとあるはずです。
絶対に「目的」が先でなければいけないのか?
そうはいっても、
「こんなグループワークやってみたい」とか「こんな授業できたら面白そう」みたいに、先に「学習方法(=手段)」が浮かんでくることもありますよね。でも、やりたいという理由だけでその授業をやってしまうと、「グループワーク」をやることが「目的」となってしまいます。「手段」であるはずの「学習方法」が「目的化」した状態です。そんな時は、どうすればいいのでしょうか。
小太郎
文科省や教育委員会は決してこんなこと言わないと思いますが、
僕個人としては、「学習方法(=手段)」から授業を考えることもありだと思っています。
その理由は、
- こんな活動やったら面白い
- あのテーマでグループワークやったら盛り上がりそう
など、授業者としてのインスピレーションや直感はとても大事で、
そこから新しい発想が生まれたり、生徒の学びが深まったりすることも多々あるからです。
実際に、チャンスを活かす人は直観力が優れていると言われます。
例えば、発想の天才の言葉として、
「心と直感に従う勇気を持ちなさい」スティーブ・ジョブズ
「直感の7割は正しい」羽生善治
などがあります。
「量質転化」と言いますが、直観力が優れている人は、
たくさんの経験を積むことによって、脳が過去のデータから一瞬で検索をかけ、
その場に最も適する質の高い選択をすることができるのだと思います。
だから、教育委員会がどう言おうと、授業者としての直感は大事にすべきなのです。
あ、でも、教育委員会に行ったら、手のひら返して「それはダメです」というかも知れません。笑
小太郎
では、もし先に「グループワーク」や「ディベート」などの「学習方法(=手段)」を思い付いたらどうすればいいのでしょうか。
「学習方法(=手段)」が「目的」達成の方法となるように、
逆算して「目的」を考えるのです。
「手段」→「目的」で授業を構成するのは順序が逆ではありますが、
「手段」によって「目的」が達成されるという論理が間違っていなければ、授業は十分成り立ちます。
「こんなグループワークやってみたい」と、「学習方法(=手段)」が先に浮かんだら、
その「学習方法(=手段)」が最適解となるような「目的」を設定しましょう。
そうすれば、「手段」によって「目的」が達成される構図ができあがります。
これは、詭弁と言うか、単なる論理のすり替えのテクニックではありますが、
あと付けではあっても授業の「目的」を見出すことで、その授業に論理的な整合性を生むことができます。
小太郎
それだけではありません。
「学習方法(=手段)」から「目的(=ねらい)」を考える作業は、
「このグループワークをしたら、どんな効果が見込めるだろう?」という思考を辿るので、
授業づくりの練習としても役に立つはずです。
つまるところ、授業の質を高めるためのコツというのは、「授業のねらい(=目的)」と、それを達成するための「手段」の関係を、論理的に検討する作業に他ならないのです。
ただし、日頃から生徒の課題や身に付けさせたい力を意識して、
いつでも「授業のねらい(=目的)」を設定できるようにしておくことがベスト
であることは忘れないでくださいね。
まとめ
今日は授業づくりのコツとして、授業の「目的」と「手段」の関係を掘り下げてみました。
- 「授業のねらい」って何?
- 「手段」と「目的」ってどういうこと?
と疑問に思っている先生は、この記事をぜひ参考にしてみてください。
- 「授業のねらい(=目的)」と「学習方法(=手段)」の整合性を検討する
- 「手段」は一つではないからこそ、授業を研究する意義がある
- 「手段」が先で「目的」が後は必ずしも間違いではない
それでは、またお会いしましょう!