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【先生が足りない!】教員に働き方改革が必要な3つの理由②「リクルーティング編」

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教員に働き方改革が必要な理由②リクルーティング編のホワイトボード
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民間企業出身の高校教師(公立)/公民科/教育委員会より指定を受けた授業研究・推進の専門家/著者/キャリアは、大学卒業→大手代理店→働きながら通信制大学で教員免許取得→教員採用試験(1度目は不合格)→→現職10年ちょい(育休取得と現場復帰を経験しました)
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学校働き方改革アドバイザーの小太郎です。

学校では、新型コロナウィルスの影響により、土曜授業や消毒作業、不安を抱える生徒のサポートなど、働き方改革が進むどころかますます忙しくなっています。

前回は、過労死・精神疾患など健康リスクから見た「教員に働き方改革が必要な3つの理由①」を解説しましたが、記事を読んだ方の中には、

「それは個人の働き方の問題でしょ?」
「教員が生徒のために犠牲になるのはやむを得ないのでは?」

と考える方もいると思います。

確かに、そうした部分もあるとは思いますが、これは教員が我慢すればいいというだけの話ではありません。

なぜなら、教員のブラックな働き方は、日本の教育の質を揺るがす大きな問題だからです。

今回は、人材確保の観点から教員に働き方改革が必要な理由を解説します。

小太郎

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教員に働き方改革が必要な理由②:人材確保の難しさ

誰もいない会議室

教員に働き方改革が必要な理由の二つ目は、教員の労働環境の悪化によって人材確保が難しくなるというリクルーティングの問題です。

人材確保が難しくなると、学校運営にも支障が出ます。学校運営に支障が出ると、生徒の学びの環境が悪化します。

つまり、

①教員の労働環境のブラック化

②教員志望者が減り、人材確保が難しくなる

③生徒の学びの環境の悪化

という流れを断つために、働き方改革が必要なのです。

 

加えて「教員に働き方改革が必要な3つの理由①」でも述べましたが、学校では過労死と隣り合わせの環境で、年間5000人もの教員が休職に追い込まれています。

ただでさえ疲弊している学校で、人材確保もままならなければ、教育は確実に先細りしていきます。

つまり「教員の働き方」の問題は、もはや「個人の働き方(ワークライフバランス)」の問題ではなく、学校教育の持続可能性にかかわる社会問題なのです。

 

教員採用試験の倍率低下

教員採用試験の現状と倍率の推移

男性が面接を受けている場面

教員のブラックな働き方は前述の通りですが、そうした働き方を敬遠してか、教員採用試験の倍率低下に歯止めがかかりません

文部科学省の調査によると、

資料_教員採用試験倍率(R4)

平成12年に13.3倍だった公立学校の教員採用試験の倍率は、令和4年(令和3年実施)には3.7まで落ち込んでいます。

中でも深刻なのは小学校の倍率で、秋田県・福岡県・熊本県で 1.3となっています。

 

教員採用試験の倍率低下の要因としては、

倍率低下の要因
  1. 大量採用されたベテラン世代の退職に伴う採用枠の増加
  2. 教員のブラック化による教職の敬遠
  3. 売り手市場による民間企業への流出

などが指摘されています。(倍率低下の原因については別の機会に詳しく解説します)

 

1については年齢構成上の問題なので、やむを得ない部分もあります。
(それでも計画的にリクルートしていればここまでの問題にはなってなかったと思いますが)
しかし、2,3は労働力不足の現代では、教員の質を左右する問題です。僕自身、生徒から何度「先生になりたかったけど、ブラックなので諦めます」と、聞いたかわかりません。

小太郎

近年の労働市場は、慢性的な労働力不足によって学生優位の売り手市場となっています。

そのため、企業は「働きやすい環境」をアピールしたり、「福利厚生」の充実を図ったり、あの手この手で優秀な人材を囲い込もうとしているのです。

 

一方の教員は、相変わらずブラックなまま。コロナ対応でますます多忙化が進んでいます。
これでは学生が教員を敬遠しても仕方ないでしょう。

 

教育は国家100年の大計と言われます。今の教育が100年後の未来の日本を作るということです。

教員の劣悪な労働環境によって優秀な人材が流出しているとすれば、教員の働き方は早急に見直し、働きやすい職場を作らなければなりません。

 

教員採用試験の倍率低下の弊害

教員の質の低下

ペーパーテストの答案用紙

採用試験の倍率低下をめぐる問題で、真っ先に指摘されるのが、教員(あるいは教育)の質が低下するのではないか、という問題です。

 

新聞・テレビなどでも、さかんに「教育の質」を心配する報道がなされています。

毎日新聞社説「小校教員の倍率低下 教育の質を確保できるか」

今年度の教員採用試験で、公立小学校教員の倍率が全国平均で過去最低の2・8倍となった。 新潟県の1・2倍をはじめ2倍を切る自治体も12道県・政令市に上る。ハードルが下がりすぎて教員としての資質に乏しい人材まで採用されたのでは、教育の質を保てない。 倍率の低下はこれで8年連続となる。第2次ベビーブームに対応し、大量採用された教員が退職期を迎えて採用数が増えていることに加え、受験者が減っているのが原因だ。
(出典:2019年12月26日付毎日新聞東京朝刊

 

また、教育評論家の妹尾昌俊さんのアンケート調査では、「優秀な人材が教員を目指さなくなっているか」との質問に、現職教員の78割が「そう思う」と回答しており、肌感覚として「教員の質」の低下を感じる教員も多いようです。
(出典:【先生の質は低下しているのか?(1)】2倍、3倍を切る採用倍率の影響、背景を考える)

 

このように教員の質の低下を懸念する声がある一方、採用試験の倍率低下が「教員の質の低下」につながるという科学的根拠はないとする立場もあります。

その理由は、仮に2人から1人を選ぶ(=倍率2倍)にしても、受験者が2人とも優秀ならば問題がないというものです。

 

確かに理屈の上ではそうかも知れません。

しかし、僕個人の見解は、

  1. 採用人数(枠)が増え
  2. 受験者数が減り
  3. 労働市場における優秀な人材の割合は一定

であるとするならば、採用試験の倍率低下は、教員の質を下げる可能性が高い、と思っています。
(この検証は近いうちに記事する予定です)

 

では、実際に教員採用試験の合格者の学力レベルはどの程度なのでしょうか。情報公開に積極的な神奈川県の採用試験の状況を見てみましょう。

 

令和2年度実施    神奈川県教員採用試験の倍率

校種募集人員(A)応募者数(B)応募倍率(B/A)
小学校3401,2693.7
中学校2401,2015.0
高等学校3802,3656.2

(出典:「令和2年度実施神奈川県公立学校教員採用候補者選考試験について」を基に作成)

 

令和2年度の教員採用試験を見ると、小学校の倍率は、全国平均の4.2倍を下回っていますが、中学・高校は全国平均を上回っており、それなりに競争原理は働いていると言えます。

では、合格最低点(合格ボーダー)はどうでしょうか。

 

令和2年度実施 神奈川県教員採用試験の合格最低点数

校種総得点専門科目一般教養・教職教養
小学校84/205点34/105点36/100点
中学校(国語)62/200点30/100点30/100点
高等学校(化学)88/200点30/100点48/100点

(出典:「令和2年度実施 神奈川県公立学校教員採用候補者選考試験 第1次試験 合格最低点及び基準点一覧」を基に合格最低点が低い教科・科目を抽出して作成)

 

グラフから分かるように、令和2年度実施の神奈川県教員採用試験(筆記)では、小中高どのカテゴリーにおいても、5割未満の得点で合格しています。(ただし、中高は合格最低点が低い教科・科目を抽出)

 

もちろん、このデータは「倍率」と「合格最低点」の推移を追ったものではなく、
両者の相関を裏付けるものではありません。

 

加えて、学力試験の結果だけで教員の資質を測ることも不可能です。

学力が高くても授業が上手いとは限りませんし、人と人との営みである教育には、コミュニケーション能力や問題解決力など、学力試験では測れない能力が求められることは言うまでもないからです。

 

とはいえ、基礎学力に不安があれば授業にも不安が残ります。

神奈川県の教員採用試験の結果を「基礎学力に不安がある」と見るかは出題レベルにもよりますが、
小中高どの校種においても、合格ボーダーが5割未満である事実
は指摘しておきたいと思います。

 

定員割れによる未配置の問題

外国人女性教員の写真

教員採用試験の倍率低下の問題は、教員の「量の面」でも悪影響を及ぼしています。

平成30年度の教員採用試験の倍率が2.2と低かった広島県では、「採用基準を下げず、質の維持を優先した」結果、470 人の採用予定に対し、420 人しか採用できずに教員不足に陥りました。
(令和元年5.14読売新聞)

教員の質を担保するために基準を維持した結果、合格の基準に達する受験者が足りず、採用予定人数を確保できなかったのです。

 

これは広島に限った話ではありません。

文科省が平成30年度に11の自治体に行った「教員の確保状況に関するアンケート結果①」によると、
平成29年度の始業日において不足した教員数(常勤)が、

  • 小学校 266
  • 中学校 101

に登っています。

 

これらの自治体では、教員が不足した結果、

教員不足の弊害
  • 教頭が担任を務める
  • 担任が決まらず、持ち回りで対応する
  • 中学校で理科などの授業ができない
  • 体育の免許しか持たない教員が現代文の授業を行う

などの事態が起きています。

 

これはもはや正常な学校運営ではありません。

本来学校が備えておくべき教育サービスが担保されていないわけですから、学校教育の質の低下と言われても仕方ないでしょう。

 

このように、教員採用試験の倍率低下は、定員割れという「量」的課題を生み、子どもたちの学びの環境を確実に蝕んでいるのです。

 

▼関連記事 あなたは大丈夫?過労死ラインが7割!過労死と精神疾患のリスクを解説▼

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まとめ

今回は「教員に働き方改革が必要な3つの理由②リクルーティング編」として、教員採用試験の倍率低下の観点から解説しました。

教員の働き方改革の必要性を訴えると、

「教員にはいくらでも代わりはいる」
「ブラックが嫌ならやめてもらって構わない」

という意見を頂くこともあるのですが、代わりはいても質が担保できなかったり、そもそも代わりがいない自治体もあることを理解して頂きたいと思います。

小太郎

今日の処方箋
  • 教員の働き方の問題は、教育の持続可能性に関わる社会的な問題
  • 教員採用試験の倍率低下は、教育の「質」の低下につながる
  • 倍率の低下はすでに「未配置」という形で生徒に不利益を与えている

次回は、「教員に働き方改革が必要な3つの理由③「生徒への悪影響編」として、生徒への不利益の観点からお話ししたいと思います。

 

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